虫歯治療のジレンマ その2
〜「治す前は痛くなかったのに治療したら痛くなった」〜
これもまた歯医者を続けていく中で必ず遭遇する言葉でしょう。
なぜこのようになるのか?と問われれば
病態は数年以上かけて進行してきたのに、
治療は1回もしくは数回で完結するものだから
と言えます。
代表的なケースはやはり虫歯治療です。
↑
こちらの虫歯(右端の歯。「 ↑ 」の歯)はおそらく数年〜十数年をかけて進行したと思われます。
ここで予備知識なのですが、
成人になってからの虫歯はゆっくりと進むことが多く、その間は痛くない
ことが多いのです。
みなさん、子供の頃の虫歯の痛みを記憶としてもっていらっしゃるので
「虫歯」=「痛い」
という1次方程式が脳内に完全にインプットされていると思うのです。
しかしこれは子どもの虫歯について、です。
繰り返しますが、成人になってからの虫歯はご本人が思っておられるほどには痛くないことが多いです。
先ほどの写真の虫歯の話に戻りましょう。
あの虫歯は数年〜十数年かけて進行したと思われます。
ところが治療はたかだか数分です。
病態の進行は慢性なのに、それに比べれば治療は圧倒的に急性と言えます。
(治療に対して「急性」という用語の使用は正確ではないと思いますが、対比のため、あえて使用します)
こういう背景で
「今まで痛くなかったのに治療したら痛くなった」
というお気持ちになるのですね。
これについても、この、治療後の痛みを100%回避する方法はありません(*_*)
よって、事前のご説明に尽きます。
当院ではよくよくご説明させていただいてから治療に入らせていただいております。
さて、治療前は痛くなかったのに治療したら痛くなった、ということは虫歯治療に限ったことではありません。
他には
根の先に膿が溜まっているとき
があります。
これも先ほどのレントゲンを再掲します。
↑
この写真の左から2番目の歯(「 ↑ 」の歯)には根が三つあります。
そのうちのひとつの先端が黒くなっているのがご理解いただけますでしょうか?
レントゲンで見ると根の先に膿が溜まっていることがわかります。
これも非常にゆっくりと病態が進行していることが多く、たいていは患者様ご自身に自覚症状はありません。
これを治療を開始すると、根の先のばい菌の巣に刺激を加えてしまうため、術後に痛みを生じることがしばしばあります。
他には
歯石が大量にこびりついている状態から一気に歯石取りを行ったとき
こういうとき、術後にひどく、歯が凍みるようになるケースがあります。
今まで歯石で歯が埋もれていたので冷たい水にも直接当たらなかったんですね。
歯石を取ることで歯に直接水が当たるようになって、凍みるようになるということです。
繰り返しになりますが、これら治療の結果痛みや凍みが生じる可能性を100%回避することは出来ません。
当院ではその都度、その都度のご説明を心がけています。