虫歯治療のジレンマ
〜あちらを立てればこちらが立たず〜
歯科治療の中で良く遭遇するジレンマが虫歯治療にはあります。
治療後に歯が凍みる、という状況です。
(もしくは、そうなることが予想されるような虫歯をこれから治療するときです)
治療上の最善を追求したら当面(治療直後とか数日〜数週間とか)は、凍みたり痛くなることも有り得るんです。
だったら神経をほじっちゃえば(抜髄、ばつずい、といいます)凍みなくなるのですが。
ですが、
神経を除去した歯は長い目で見るといろいろと問題を生じ易い
のです。
それを仕事柄、日々見ているので、10年先のことを考えると、神経を取っちゃうことを悩んでしまうのです。
かといって、虫歯が深いと、処置後に痛くなるかもしれない・・・・。
ジレンマです(*_*)
↑ ↑
大きな虫歯です。 これは完全に神経に虫歯が到達しています。
残すべきか、ほじるべきか。 これは神経は残せません。無理です。
悩むところです。 このケースは悩みません。
ここで、ひとつの状況を想定させてください。
一緒に、歯医者のセンセイ(あの、マスクの下でもごもご言って。何を考えているのか今ひとつ、よく分からない、あのセンセイ)
の心のうちを一緒にのぞいてみましょう
状況:
虫歯を削ってみたら深いところまで虫歯が及んでいた
歯医者:「うーん。もうちょっと削ると露髄(神経が露出すること)しそうだなぁ。
今は麻酔を打っているから痛くないだけで。
神経にはずいぶんダメージが加わっちゃっているかも。
麻酔が切れたら痛くなるかもしれないなぁ」
さて、皆様。
皆様が施術側(つまり、歯医者の立場)になったつもりで一度考えてみてください。
この歯医者の心に、続いてこういう二つの考えが浮かび、ジレンマに陥るのです。
パターンAとパターンBを続けて見ていただきますね。
パターンA 神経を残すことにした場合
歯医者:「神経をほじっちゃうと、長い目で見るとやっぱりだめになり易いのは事実だしなぁ。
必ずだめになる訳ではないけれど。
少なくとも歯の寿命が短くなるのは事実だしなぁ。
よし、神経はほじらないようにしよう。
痛くならないように薬を塗って、セメントで埋めて・・・」
↓ (翌日の朝イチ番にその患者様から電話が)
歯医者:「ああぁ・・。
昨日のあの患者さん、痛くて痛くて夜、全然眠れなかったって・・・。
出した痛み止めを飲んでも全然効かなかったって・・・。
申し訳ないことをしたなぁ・・・・。
今からすぐ来ていただいて、神経を取ることにさせていただくことになったとはいえ・・。
やっぱり昨日の段階で神経を取っちゃった方がよかったんだなぁ・・・。
とほほ・・・・」
パターンB 神経を取り除くことにした場合
歯医者:「神経をほじっちゃうと、長い目で見るとやっぱりだめになり易いのは事実だがなぁ。
必ずだめになる訳ではないけれど。
でも、麻酔が切れて、もし、ものすごく痛くなったら本当に申し訳ないからなぁ。
よし、神経をほじることにしよう。
麻酔は打ってあるから、神経を露出させて。
このファイル(針の形をした器具)でほじって・・・」
↓ (翌週の次回の治療時)
歯医者:「痛みは無かったようで安心したなぁ。
でも、毎日歯を見てるけど、神経が無くなった歯がだめになることって多いなぁ。
本当に神経をほじるのが最善だったんだろうか?
とりあえず今回のことだけを考えたら痛くなくて患者さんは喜んでくれたけど。
10年先、20年先のことをきちんと考えて差し上げたら。
やっぱり先週、『一度頑張って、神経を残す方向でトライしてみませんか?!』って。
こう言うべきだったんじゃないかなぁ・・・
うーん・・・・」
いかがでしょうか?
マスクの下で、もごもご言っているあの歯医者のセンセイも、意外と悩んでいるんだなぁ、と思っていただけました?
はい。悩みますね。この判断は。
解決法としては、とにかく事前のご説明しかありません。
削っても痛くならないような虫歯治療は今のところ無いのです(ため息)
ですので、当院ではある程度深い虫歯を治療させていただく場合は必ず、
治療後痛くなるかもしれません
と申し上げて、ご理解とご協力をお願い申し上げています。
でも、
もちろん極力そうならないように頑張ります
(>_<)
何卒よろしくお願いします。
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